【日常短編】さがしもの/角田光代

✓ 本が好きな人
✓ 大事な本に出合いたい人

あらすじ
本、それは運命を変え、世界につながる小さな魔法。【全国学校図書館協議会篇・集団読書テキスト】教室に大きな感動を呼んだ傑作短編集!
「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。無限に広がる書物の宇宙で偶然出会ったことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。『この本が、世界に存在することに』改題。
「旅する本」、「だれか」、「手紙」、「彼と私の本棚」、「不幸の種」、「引き出しの奥」、「ミツザワ書店」、「さがしもの」、「初バレンタイン」。
9つの本にまつわる短編集を収録。
「旅する本」は旅行先の古本屋に自分が昔売った本を見つける。買って、また売って。違う旅先の古本屋さんでも見つけ、また買って売る。一緒に旅をする本の話。
「だれか」旅先の宿で一冊の本に出合う。おおくの旅行者に読まれた本は、すこしくたびれている。この本を読んだ知らない旅行者に思いをはせた話。
「手紙」旅先の宿で何気なく手に取った本に手紙が挟まれている。知らない人からの手紙を読み入り、自分に重ねてしまう話。
「彼と私の本棚」本好きのカップルが同棲ののち破局。引っ越しの準備で、お互いが持ち寄った本の選別中の主人公の気持ちを書いた話。
「不幸の種」元彼が友達と付き合った。立て続けに起こる不幸。これもあの本のせいだーー。元彼の現彼女伝いにその不幸の本を渡すが、ひょんなきっかけで自分のもとに戻ってくる話。
「引き出しの奥」人から頼まれたら断れない主人公。ある日、伝説の古本の噂を聞き古本屋巡りを始める。本を探しているうちに、自分の大切な時間を探し始める話。
「ミツザワ書店」小さな町の個人書店。大人になって訪れると閉店していた。昔盗んでしまった本の代金を返却し、店主のおばあちゃんに自分が書いた本を渡そうとする話。
「さがしもの」余命いくばくもない祖母のお使いを頼まれる主人公。祖母の死後にその本を見つける。時代を超えて読み継がれる本の話。
「初バレンタイン」初めての彼氏にバレンタインでプレゼントしたのは、チョコレートではなく本。きまずさと恥ずかしさで戸惑う主人公。何年か経過し、夫もその本を持っていた話。
「あとがきエッセイ 交際履歴」では、著者の本遍歴をありのままに語ってくれます。
感想
何度も書いていますが……。本が好きな人に読んでもらいたい一冊!!!
9つの短編集とあとがきの中で、私のお気に入りは「旅する本」「引き出しの奥」「あとがきエッセイ」です。
お気に入りの中から、好きなフレーズを紹介します!
かわっているのは本ではなくて、私自身なのだと。
(中略)そんなふうに、私の中身が少しずつ増えたり減ったりかたちをかえたりするたびに、向き合うこの本はがらりと意味を変えるのである。p23「旅する本」さがしもの/新潮文庫
小説の感想は、その時の自分の感情にすごく左右される気がします……
失恋している時は、恋愛小説のハッピーエンドに共感できなかったり……負の感情が溜まっているときはサイコサスペンスを読みたくなったり!
そうやって何年か後にもう一度読み返すと、当時の気持ちを思い出したり、違う感情で小説を読めたりします。
本の一番のおもしろさというのは、その作品世界に入る、それに尽きると私は思っている。
p220 「あとがきエッセイ 交際履歴」/新潮文庫
この一文にはすごく共感!!!!!!
その時自分の好きな世界に入り込めるのは私も大好きです。
お料理が好きならシェフが主人公の小説、海外が好きなら海外小説やエッセイ、絵が好きなら絵画をテーマにした小説。
好きな世界から本を決めるのも素敵ですし、本の世界に入ってから料理や海外、絵画を好きになるのも本当に素敵です。
本は素晴らしい世界を私たちに見せてくれるので大好きです!!